暴力団からの追求を逸らしながら閉鎖

依頼内容

ある日突然、事務所に暴力団風の人達が押しかけて来たために、社員が出社しなくなってしまったので、助けて欲しい

との依頼だった。

再建への経緯

千葉県のJ社は健康サプリメントのメーカーで、全国にネットワークを作り販売していた。

その中の販売店が、

「これを飲めば必ず病気は治る」

と宣伝。

それを信じた顧客は大量に飲み続けた。

その応援にメーカーの社長が駆けつけ何度も指導し、一旦は快方に向かったかに見えた。

しかし1年後に亡くなった。

ガンであり簡単に治るものではなかったのだ。この間約500万円もの代金を払わせてしまった

それに怒った奥さんは、暴力団を会社に押しかけさせたのだった。

社員の退職

これにびっくりした社員は怖がり、ほとんどの社員が辞めてしまい、残ったのは2名のみだった。

このような状況で私に助けを求めに来たのだった。

暴力団といっても明らかにこちらに非があり、先方の言い訳の方が筋が通っている。

しかし、そのことよりも社長が病気で休んでおり、会社の存続が可能かどうかの分析が先だった。

再建の可能性を探る

再建への可能性

社長は難病を患い出社が出来ず、奥さんが経理を担当、主に社員が経営していた。

詳しく見ると赤字続きである。

その赤字をカバーするために新規事業を計画、既に投資をしており、更に借入をしようとしていた。

そこで詳しく聞くと、その新規事業の提携先はほぼ詐欺に近いものであり、成功の可能性はないものと判断できた。

つまり、うまい話をして投資させ、後は知らないとする無責任な会社だった。

私はその事を説明、会社を閉鎖することを提案した。

社長の健康を考えると経営続行で寿命を縮め、さらに家も無くなることが十分予想されたからであった。

副社長に就任

社長の長期休業、業績低迷、暴力団からの脅しなど、残った社員では乗り切れないと判断。

私が副社長として全ての責任と権限を持ち、取り掛かることにした。

転生による再建方針

  • 全国にある販売代理店の内、有力な販売代理店に営業譲渡をし、会社を閉じることにした。
  • 借金は多額だが、極少額の返済額にして乗り切ることとした。
  • 最低限、住宅を確保、年金と少しの販売手数料により生きていくこととした。

① 暴力団との交渉

ある一流ホテルのロビーで、見るからにそれと分かる代理人2人と面談をした。

買った代金の倍くらいの金額を請求され、払わなければ警察へ詐欺罪とし告訴し、消費者庁へも医事法違反で訴えるという。

私はその場での即答を避け、
一旦帰り先手を打っての対応策を考えた。

翌日、暴力団が差し出した名刺の経営コンサルタント会社に昨日の返答を文書にして郵送した。

そうしたら住所不明で返ってきた。

そこですぐに確認のため、名刺の住所を実際に尋ねると違う会社になっていた。

これで、相手の正当性が崩れた。

② 警察へ相談

翌日、地元の警察署を訪ね、刑事さんに経緯を説明、正直に相談すると「保護する」ことを約束してくれた。

③ 消費者庁へ相談

「健康食品を飲めば治り助かる」などと言って販売することは禁止されているので、圧倒的にこちらが悪いが、正直に話すと「消費者庁を利用している」と判断してくれ、逆に「応援する」ことを約束してくれた。

④ 転生方針の変更

電話で脅迫的に「金を出せ、出さなければ裁判だ」と脅してきたので「仕方ないですね」と返答した。

すると間もなく顧問弁護士より通知書が届いた。

これが普通のやり方ではないのである。

当然、訴訟相手は会社になるが、なんと営業譲渡をした代理店と私にまで連帯責任があるとして請求してきたのであった。

私は裁判を何度もしているが、私は弁護士でなく代理人の資格が無いので、社長に代わって直接的な対応が出来ない。

しかし今回は、私も当事者になったのでやり易いと判断、
即、通知
書に対する返答書を贈り、やんわりと拒否した。

このやり取りを2回ほど繰り返すと、さすがに弁護士は勝ち目が無いと思ったようで手を引いた。

連帯責任を追求された販売店には「心配いらないから」と説得したが、女性社長は弁護士に

相談、厄介なことになると思ったらしく、私達との縁を切ってしまった。

これで、転生による事業継続は絶望的になってしまった。

倒産による人生の再建方針に切り替える

倒産

これで、営業譲渡をして販売手数料で生きる方法を諦め、会社を完全に閉鎖することにした

幸い、事業を縮小しており、未払金などほとんど無く、あるのは銀行借入と親族、友人からの借入だった。

まず銀行に対し、閉鎖通知書を出し少額返済に切り替えた。

ほとんどが保証協会付だったので代位弁済をしてもらい、数カ月後、保証協会から移行した保証協会サービサーとの話合いにより、5,000円/月の返済で了解を取った。

会社は亡くなったが、連帯保証人としての責任を取る形だ。

住宅ローンについては、毎月の返済額をアパート並に減額してもらい、家族に協力して頂き、現住宅に住み続けることが出来た。

これで倒産処理は終え、平穏な生活を遅れるようになった。

そして問題の相手には、私が代行でご仏前に御香典を持ち、お見舞いに行くことにした。

① 返金要求の再燃

ところが、ご挨拶に行く準備をしていると、1週間も経たない間に今度はお亡くなりになった方の奥様から、健康食品全額の返金を求めて来たのであった。

どうしても諦めきれないようで、文面には鬼気迫るものがあった。

無理もないことである。

サプリメントにより延命効果はあったが、なんと言ってもこちらに非があり、未亡人となった奥様からの手紙を無視は出来ない。

かといって年金生活者となった社長は千円の余裕もない。

そこで丁重にお断りする内容の手紙を提出した。

すると間もなく、再度手紙が届いたので、すぐこれに対しても返答をした。

② 倒産処理の終了

この状態が約2年間も続いた。

その間、ほぼ毎月手紙のやりとりを続けた。

文面は終始「こちらに非がありなんとしてでも要求に応えたい。しかし収入の道を閉ざされ年金生活者となり、病気も悪化している。生きていくのに精一杯である」ことを情に訴える書面を送り続けたところ、先方も徐々に怒りが消えていった様子で、手紙を出すことを諦めてくれた。

これで倒産処理が完全に終了した。

再建コンサルタント:古川益一のコメント

古川益一

新しい人生へ、文字通りの倒産

病気の社長は、家族と共に平穏な余世を送ってもらうことになった。

こうして、会社を倒して新しい人生へ産まれ変わる、文字通りの倒産をすることが出来た。