相談内容
岐阜県のY社は健康食品の製造販売業者である。
販売方法は全国に販売代理者店を組織して、代理店から直接消費者に販売する形を取っていた。
今まで順調に売上を維持してきたものの4~5年前から低迷。
赤字決算に陥ってきた。
加えて専務、部長など主な社員が社長の指示に従わなくなってきたため、再建に力を貸して欲しいとの依頼があった。
分析結果
「業務低迷の原因はどこにあるか?」分析を始めた。
役員、部長との面談
先ず、専務、営業部長、経理部長などと個別に面談したところ、社長に対する不満・不信感が強かった。
そこでその理由を聞くと、社長の我がまま、器不足による不満だった。
明らかに社長の方が悪いのである。
善悪で考えると社長に反省してもらうか、交代してもらうかの2つに一つしかないのであった。しかし、その両方とも受け入れられないようだった。
組織の再編成
仕方なく組織運営の原則により、専務、部長2名に退職してもらった。
その3人からは私に対して非難の声が大きかったが、解雇の理由を話して理解してもらった。
その結果、あまり能力は高くないが、社長と行動を共にする社員が残り再結成、新たな組織となった。
営業改革
若くてやる気のある社員を営業部長に昇格。
全国の販売代理者の再整備を行った。
①製造の合理化
健康食品の原料は海外から輸入。製造は国内の会社にOEMで委託していた。
このルートを再整備し製造体制を確立した。
②売上利益率の確保
今まで売上利益率に無関心だった社長に売上利益率は何%ですか?と聞くと20%と言う。しかし、損益計算書を見ると15%程度である。
製造原価に20%を上乗せして販売していたのであった。
100円とすると、20円の利益として120円としていたのであるとすると売上利益率は、20円÷120円=16.6%にしかならない。
そこで、100円の原価ならば100÷(1-0.2)=125円になることを教えると、初めて聞いたとびっくりしていた。
社長は、元、大手化粧品メーカーの営業マンであって、財務意識は薄いのであった。
③売上目標(売上を減らしながら利益を上げる)
売上目標を聞くと、前年度よりも高い目標を掲げている。
しかし、冷静に分析すれば、どうしても売上が上がる要素は見当たらないのであった。営業畑の社長は「がんばれば何とかなる」と言い張るのである。
そこで、冷静に判断してもらうため、3年前からの損益計算書の売上額をグラフ化した。過去3年間の流れから予測すると、翌年は必ず売上は減少、5年目には0になることを納得してもらった。
このグラフを見た社長は急に将来に対する恐怖を覚え、私の提案に従い営業に対する考え方を改めてくれた。つまり、売上の下げ止まりを予測、その売上内で営業利益を上げる方針としたのである。
④財務戦略[ダム経営]
運転資金を確保するために財務の全てをチェックし、銀行に対し経営計画書を提出。
将来の見通しを説明し、借入をして、
円滑な経営を目指した。
改革の結果
社長に対し不満を持っている幹部社員が退職したことにより、社内は社長を中心とした明るいムードが出来上がった。
それにつれて自然に経費が削減されると共に売上は増加に転じた。
こうして再建は成功した。