相談内容
売上減少と収益性悪化により、資金不足、破綻寸前の水道配管会社から再建依頼を受けた。
経緯
M社長は20年の工事経験から起業、3年前にB株式会社にて創業した。しかし 赤字決算が続き、4年目の今期を乗り越えることは、ほとんど不可能の状態であった。
今月末の仕入代金や経費の支払いも出来ない状況だった。
再建方針の確立
創業3期目の決算も連続赤字となれば、ほぼ再建は絶望的になる。
そこで過去2ヵ年の決算書からの流れを精査したところ、赤字決算の理由が見えてきた。理由が分かれば再建は簡単である。
現状を何とか資金繰りにより乗り切ることが出来れば、再建出来ると判断できた。
即、再建計画書を作成、再建に着手した。
再建の歩み
1.当面の経営難を資金繰りにより乗り切る
再建軌道に乗せるためには、先ず2~3ヵ月の資金繰りが必要だった。
現状を資金繰りにより乗り切り、
数ヵ月の延命を確保した。
- 仕入先への支払い猶予依頼
- 社会保険への支払い猶予依頼
- 借入金のストップ
その他ありとあらゆる手を打ち、資金の流出を防いだ。
2.営業改革
①売上利益率の重視=実行予算書の作成
今までの安易な現場管理を全て見直し、売上利益率の確保を計った。
②工事着手前の利益率の確保》
今までのやってみなければ分からない安易な現場管理から、着工前に利益率を確保してから着工することとし、徹底的に減価計算を行った。
これにより、売上利益の無い工事はなくなり利益が確保できるようになった。
取引先も大手工事会社を中心に取り組むこととした。
3.組織改革
①人罪の解雇
会社の中で最も中心的な存在だった幹部社員が、会社の利益を喰いものにしているガンであった。
このことを社長に指摘したが、最初は信じなかった。
「最後まで会社に骨を埋める覚悟を持っている」と言ってくれている、と言うのである。それも当然だった。「こんな生ぬるい会社で、自由にやらせてもらえるなら死ぬまで居たいと思う筈」と言ったら、少しずつ実体が分かってきた。
下請けや他の社員に威張っていたために、優秀な職人が辞めていったことが分かってきた。
そして、見積りが甘いために、赤字工事が多かった。
自分だけ高い給料を取り、赤字の元凶であることを考えていない人物だった。この事実を本人と話し合ったが、理解してもらえず辞めてもらった。
②社長と社員との一心同体化
その人罪がいなくなると、押さえられていた社員にやる気が芽生えてきた。社長と社員の一心同体の心が芽生え、会社の、ムードは一気に明るくなった。
それにつれ、「売上は減っても利益は向上する」理想の形となってきた。
4.会社の形態の見直し
現在の株式会社設立時の資本金には最低の制限がない。そのためにB会社は資本金を10万円としていた。
そのくせ借入は1,000万円単位である。
これではつり合いが取れない。
そこで資本金を100万円に変更することにした。さらに、決算書を見ると、社長に対する貸付金が残っていた。
単純に会社のお金を社長が使ったものではなく、事故処理に掛かった費用を処理する際、名目が無いために安易に、社長への貸付金処理としてあった。会社から社長への貸付金があった場合、金融機関は一切相手にしてくれない。
絶対に融資はしてくれないものである。
貸したお金を社長が使ってしまうことは、金融業をやることとなり、許されないことである。なぜ、貸付金にしたのか?と問うと税理士の指示というのであった。
※半期決算の断行
ちょうどこの時は決算が終わってから、半年になろうとしていた時だった。
あと半年も待っていられないので、6ヵ月の半期決算を断行した。
無理に黒字決算とし、税務署に提出した。資本金も100万円に増資、500万円の社長に対する貸付金を回収したことにしたのである。もちろん資本0円で実行するために、知恵を絞った。
この黒字決算書を銀行へ提出したことにより、銀行から借入れが出来ることになった。
こうして大ピンチを脱出することが出来た。
5. 組織運営
①毎月PDC会議を定期的に開催
前月の収支結果の反省と翌月目標の設定、各問題への対応などを全員で話し合い、誕生パーティーも行うようにした。
②低いノルマの設定
売上利益率の向上と、販売管理費の削減により、高収益会社となった。
売上を減らせば自ずと利益は上がる真理の実践である。
そこで売上目標を下げることにより、毎月の賞与を出すことが出来ることに気が付
いた。
敢えて売上目標を下げ、達成し易くして、毎月賞与を出せるようにした。
その後の経過
このようにして順調な経営となり、社長と社員が一体となり、和気あいあいとした社風が芽生えた。
社長は、現在手狭となった事務所を移転する計画を持ち、コロナ禍が落ち着くのを見定めてから、次のステップのための事務所と作業所、さらに職人達が集まることの出来る集会所を併せ持つ、新しい基地を計画している。
将来を期待したい。