再建事例

相談内容

都心の駅前にあるB不動産会社は、一時大きな売上を上げ利益を計上していたが、徐々に売上は減り、利益率も低下。

赤字経営が続き、税金、社会保険の未納、そして借入金の返済も滞るようになり、ノンバンクからの借入も増えつつあった

このまま行くと数ヵ月の命だった。

この経営危機を救って欲しいとの切実な依頼があった。

分析結果

経営分析しているグラフ

D社長は営業マンとしての能力は高いが、財務には疎かった。

今日まで営業能力には自信があり、何とかなるという精神論で経営をしていた。D社長の意識改革が出来れば、再建は可能である。

しかし、考え方を変えることは難しいことである。

何度言ってもなかなか理解出来ないので仕方なく、すぐ再建に着手することを避け、意識が変わるのを待った。

元々、勉強熱心な方であり、余分な知識も多かった。売上は増やすものと思い込んでいたのである。

改革方針

時間をかけ、営業マンでは無く、

社長としての器の限界を知ること、そして己の器に収めることにより、無理なく成長して行く

ことを理解してもらい、一から全てをやり直すこととした。

営業品目の不動産売買、仲介、管理、建築の内、不確定な不動産の売買事業から撤退する方針とした。

改革方法

経営の改革

「経営の樹を育てる」如く根から幹、枝、葉と見直すこととした。

① 根=経営理念

会社の最高の理念、哲学として改めて作り直した。

【幸せを呼ぶ住宅を想像し、家族に安定と笑顔を提供する】

この経営理念を社内外の協力業者の皆さんと共有して経営をしていくこととした。

②幹=経営方針

【不動産を通して地域と密着し、共に成長するオンリー1を目指す】

③枝=経営戦略

◎一本目の枝 《組織戦略(ヒト)》

  • 人件費比率40%を守る
    人件費比率40%を守るため、給与システムを改革した。
  • 役員報酬半減と支給額確保
    役員報酬は、経営者へ入る手取り額を会社負担分の社会保険と合計すると約半分近くになるものである。この仕組みを理解してもらい、役員報酬を半額とした。しかし、手取り額については、販売経費のやり繰りにより、現状を維持した。
  • 社員の給与は固定給から変動給とした。
    営業マンを数名雇用していたが、給与以上の成績を挙げている者はいなかったので、全員歩合給(能力制)に切り替えた。

◎二本目の枝《営業戦略》

売上を減らしながら利益を上げる方針とし、営業品目を見直した。

  • 不動産売買事業からの撤退
    利益率が少なく不動産取得のための借入金負担が大きいため、完全に撤退することとした。同時に所有していた不動産も売却し、売却金額を返済と運転資金に充て急場を凌いだ。
  • 不動産のかけ込み寺新設
    不動産にからむ悩み事、もめ事など全ての相談に乗り、解決するため、「不動産かけこみ寺」を開設した。資産売却、ローン滞納、相続トラブル、借地借家権トラブル、空家利用、福祉相談、賃貸管理相談、投資詐欺相談、住宅ローンサポート、保証人問題など全ての悩みに応じ、解決することとした。これには、経営理念を共有できるエキスパートと提携することとした。
  • ITの利用
    IT専門家と提携、ブランディングを始め、ホームページを整備、充実した。これにより、会社の品格が向上。信用度も上がり、大手企業との取引も増えた。

◎三本目の枝《財務戦略》

財務に精通している社員がいなかったため、先ず、誰でも簡単に出来る経理システムを作成、同時に経理担当社員に基礎から経理を指導した。

特に、収支と資金繰りの区別が出来ない人が多いが、この会社も資金繰りで記帳をしていた。それを根本から指導、数ヵ月間は一つ一つチェックすることにより、数ヵ月で完全にマスターした。

そして、税理士は財務と経理の違いを分かってもらえなかったので、やむを得ず、税理士を入れ替えた。

  • 銀行、税務署、社会保険事務所に対して
    再建計画書を作成、返済猶予を頂いた。この再建計画書により、関係者の協力を得ることができた。

再建のその後

再建後

売上高を、前年度より1/3に圧縮した結果、高収益体質となり、コロナ禍であるにも関わらず、翌年度は黒字決算を計上、順調に歩んでいる。

特に社長は経営の勉強に意欲的で経営の樹を育てる会に必ず出席、勉強を続けており、今では自社に生かすのみならず、不動産かけ込み寺へ来られた方に指導するほどに成長している。

この間1年間足らずのことである。

経営の「知識」ではなく、「真理」を身に付けると必ず再建出来る好例である。

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