倒産危機

この事例は、30年前、私が建設会社を経営、事業計画立案により建築工事を受注していた頃の実例です。

相談内容

静岡市の繁華街で家具店を経営しているが、大手家具店の進出により伸び悩み、赤字経営が続き「どうして良いか分からない」との相談があった。

診断内容

経営状態を見ると収支は成り立たず、近い将来、破綻することがはっきりしていた。

しかし、立地が良いのである。

静岡市の最も華やかな場所であり、業種を変更してやり直せば生まれ変わることが出来る、と思われた。

そこで「両親が引退し、長男に任せて一からスタートする」方針を提案した。

しかし、Fさんは他にも相談をかけており、その業者は甘く、夢を見るような提案をFさんにしていた。極めて無責任な提案であり、とても実現できる内容ではなかったが、Fさんはそちらに心が傾いていたので私は辞退した。

2度目の相談

途方に暮れてギブアップ

2ヵ月程経過してから「改めて相談に乗って欲しい」とのTELがあった。

そこで出掛けてみると、両親、子供3人、さらに両親の兄弟まで集まり、家族会議を開いていた。

結局、甘い提案をしていた業者は最後に逃げてしまい、途方に暮れているのであった。

娘2人は「実家が無くなる」と言って泣いている。

仕方なく、相談に乗ることになった。

その時の状況は次の通りである。

「間口7m奥行40mの細長い土地を完全に所有するには、兄弟に相続分として2,000万円を支払わなければならない。資金は無く、借金をして生計を立てている」程である。

再建方針

「現在の家具店を閉鎖。自宅を入口に新築(1階車道 2~3階住居)、奥に立体駐車場(メリーゴーランド型)を建設する」計画を提案した。

  • 事業主体は長男とし、父は引退する。
  • 兄弟へ支払う相続分は借入れにより支払う。
  • 必要資金は全額借り入れる。(建築費+相続分担金+諸経費)

資金調達方法と返済方法

返済方法

  1. 住宅新築、3階建て 2,500万円
  2. 駐車場、新築メリーゴーランド型立体駐車場 9,000万円
  3. 兄弟への相続金額 2,000万円
  4. 新築工事完成までの約1年間の引っ越し及び生活費、他諸経費 1,500万円

1~2まで全額15,000万円を長期で借入れ、立体駐車場経営の利益から返済してゆく。

実行

この方針がまとまり、即、事業計画書を作成。

私が懇意にしている銀行の支店長と相談、最大限の理解を頂き、実行出来ることになった。

日程

  1. 現家具店在庫処分セール後、閉店
  2. 新住居(アパート)への一時移転
  3. 相続金支払い
  4. 現家具店、解体撤去
  5. 奥の立体駐車場新築
  6. 道路前の3階建て住居新築

建設完成後

引っ越して、全てが計画通りに実行するまでに約1年を要した。

近くにデパートもあり、駐車場として提携、駐車場経営がスタートした。以来、家族5人で力を合わせ経営しており、息子を中心とした幸福な生活を送っている。

落成式式典に招かれた時、私を「白馬の騎士」として感謝されたことが、良き思い出となった。

その後

業績アップ

この父から子への転生による、計画の成功例が評判となり、仕事は増えていった。なにより、銀行からの土地の活用についての相談が増えていった。 

当時、バブルショック後の倒産ラッシュにより、銀行は競売となる不動産処理に困っていた時と重なった時であった。

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